News|Jul.3.17
浅草の靴メーカー時代に数々のドメスティックブランドの生産に関わったYudai Tanaka氏。NY、パリでの経験と独自の感性が織りなされ、「カテゴライズされないファッションとしてのリアルシューズ」「対個人というシンデレラの靴と同じ感覚の制作姿勢」のような、INIのブランドコンセプトに影響を与えているようだ。
メールインタビューでは過去の経験や現在の靴作り、今季のコレクションについて伺った。彼からうまれるINIを少し紐解くことができたのではないだろうか。
♥デビューコレクションの印象は、静けさと力強さを感じます。どのような女性が履くことを想像した靴でしょうか。
ヨーロッパの夏の夕刻は空が本当に蒼く、すごくきれいなんです。夜になる前のその色とエッフェル塔の展望台で一人佇む女性とのコントラスト。その風景がいつも頭の中にあるので、その女性を想像する事はあります。それ以外には特定の女性像やカテゴリーを考える事はありません。
今回展示会には沢山の友人が来て試履きしてくれたのですが、それを見ていて思ったのが、それぞれの人により、しっくりくる靴とこない靴があり、まさに個人を映し出す様な見え方をしていました。INIはカテゴリーやジャンルと言ったものを特に意識しない様に作っているので、そう言った意味では成功だったと言えます。
♥作りを仕事に選んだ理由やきっかけを教えて下さい。
また、ブランドを立ち上げようと思ったきっかけ、経緯などもお聞かせください。
NYからの帰国後に住んだ家の近所に靴のメーカーがあり、表ではいつも木型を削っている職人がいました。それを見る前までは靴がどのように作られているか考えた事がありませんでした。そこから興味を持ち、飛び込みでその会社に最初はバイトで入りました。靴の制作過程は基本的には分業なので、正式な雇用後その会社から打診され自分でも興味を持ったのが木型制作でした。それから3年程木型職人として経験を積みました。その後2年のパリ留学を経て帰国し、前の会社を出戻りですが1年手伝い、転職を考えた時に靴のブランドを立ち上げるという事を強く意識しました。
何をするかは決まっていなかったのですが元々独立したいという意思は強かったので、ある程度の歳になり知識と経験を多少なりとも持っていたのが靴だけだったのです。僕は世の中に1足しかないという様な靴より、ある程度の数が生産されている靴の方に魅力を感じるので、自身のブランドを立ち上げるにあたり生産工程を深く知る事といい靴を作れる生産背景が必要だったのです。独立する前の前社がそれに適した浅草のメーカーだったのでそこに営業企画、生産管理として入社し3年間勉強させてもらいました。メンズの靴を作るより、レディースの靴を作る方がより自分自身の好みに対して許容が広く、女性の脚に対し美を感じ、愛着心を持っているのでレディースのブランドを立ち上げる事にしました。
♥NYとパリではどんな活動をされていましたか、またその目的や得たものはなんでしょうか。
NYでは最初、オーナーがユダヤ人で日本のおもちゃを扱うおもちゃ屋さんでバイトをし、その後今は無くなってしまったのですが、ロウワーイーストにあったNYストリートカルチャーに根付いたおもちゃ屋でバイトをしていました。まわりにはStussyやSupreme周りのクルーがいたり、僕が10代の頃のストリートヒーローみたいな人達がいたので、すごく刺激的で面白かったですね。それとNYで知り合った仲間とDJをしてパーティーを開いたりしていました。DJを通して音楽から得たものはすごく大きかったと思います。音楽は目に見えないですから、そこから今の自分のベースにある、出来上がった物に対して一番大事なのは雰囲気、という考え方は養われました。
パリではファッションウィークでのアテンドや古着の買い付けなどをしていましたが、一人友人がアントワープ王立学院に入学したので、その友人が1年生時にはほぼ毎月1週間ほどアントワープに滞在して課題制作の手伝いをしていました。そこで友人を通してですがアントワープ王立学院での考え方等も学ぶ事が出来ました。世界観の打ち出し方アティチュード、コンセプトとは、など学ぶ事は多かったです。
海外に出て得たもので自分の中で大きな事は、十人十色という当たり前の事実を当たり前の様に感じる事が出来る様になった事です。多種多様な人種がいて多種多様な宗教があり個人もいれば集団もいるという事。マジョリティーがいてマイノリティーがいるという事。それを思えば国内も海外もあまり問題になりません。
海外に移り住んだ事等、何かを得たいという欲求の様なものはありましたが、明確な目的はあまりありませんでした。自分の行動はすごく断続的だったと思います。靴の生産背景を得る為に転職した時、初めて目的があり明確な意思のもとに行われたと思います。
♥靴メーカーで木型職人や生産管理のお仕事をされていましたが、INIの靴作りもご自身で木型や生産管理をされているのでしょうか。
木型は基本的に自分で削っています。自分の理想とするフォルムを打ち出すのに木型屋に頼むのは無理があると思うからです。ただし今は金銭的な問題もあるので、中には靴メーカーで持っているフリーの木型を使わせてもらっているデザインもあります。今後は100%自分で削った木型に移行していきます。
生産管理に関しては、靴の制作過程で最初にやる仕事が仕様書を作る事とロット表という物を作ることなのですが、それは全て自分で作ります。僕はサンプル作りをメーカーにお願いせずに自分で職人のところをまわり、話し合いながら作っているので、仕様書等をメーカーに頼む事はできません。オーダーを締めた後、サンプルと仕様書を前にメーカーと綿密な打ち合わせをして生産をお願いするというやり方でやっています。中にはオーダー数が少なく、メーカーにお願いできないものもあるので、それらに関しては自分で生産管理までやります。
♥日本の靴メーカーでのお仕事で、さまざまなドメスティックブランドに携わられていますが、その経験からINI立ち上げの際に、どのような経験がいかされていますか?または反面教師のような側面はありましたか。
人に物作りを依頼する難しさです。上がりのイメージを伝える事も難しいですし。その上で時間的、金銭的な制限があるので、もしかすると妥協点を見いだすのがベターという結果に陥りかねません。様々なブランドの生産に携わりながら仕事を段階的に考えて、自分でする仕事、人に依頼する仕事の線引きをどこでするのが一番いいのかを常々考えていました。それに携わる人達はみなもちろん仕事ですからしっかりと自分の仕事をこなしますが、気持ちの入り方は人それぞれですし、特に靴の生産ラインは分業なので意思の疎通を図る事がすごく難しい仕事だと思います。
♥デザインコンセプトのBoundary line (境界線)について、概念の境界線への疑問をテーマにされていますが、2012awのアイテムでは具体的にどのような部分がこのコンセプトを体現しているのでしょうか。(デザイン、素材、全体的なコレクションラインナップなど)
プレーンパンプスのシリーズはこのコンセプトを特に具現化しようとしているアイテムです。
特にエナメルのパンプスは、Reflection to Invisible(反射から透明に)という名前を付けていますが、黒は’夜を反射して闇に溶け込む’、グレイは’あなたと地面の境界線を消す’というイメージから作られています。これは靴と外との境界線を消すというテーマです。消える=透明になる、透明化するのに一番現実的なのが反射するという事だと思うのでその為、夜の色(カーフエナメルの黒)とアスファルトの色(ゴートエナメルのグレイ)の透明感のあるエナメルを選びました。プレーンパンプスの内この2足だけは靴の製甲の仕様を折り込み(ステッチが見えるタイプ)にして透明の糸を使っています。透明の糸を使う事によりステッチを消したいという意図と共に、光に当たると反射してステッチが多少際立つという逆効果も持っています。
基本的にはミニマリズムとモダニティーという全体像で考えています。ミニマリズムという概念は逆のマキシマリズムがなければ存在しませんし、モダニティーもクラシックという概念がないと存在し得ません。世の中にある全ての事柄は2面性を併せ持つものなので、まずはポイントとなる単一的な方向でデザインを考え(ミニマリズムとモダニティー)、それから逆を考え、最後にもう一度ポイントを考える様にしています。
♥今後の目標を教えてください。
現在国内での靴産業は非常に厳しい状況に置かれています。中国生産に取って代わられた為に生産数の激減、それに伴い国内では対応しきれない価格破壊など。今後靴製造を仕事としていきたい若い人達に対しての就職先も少なく、業界自体の高齢化は深刻です。
難しいでしょうが、まずは直接販売できるショップを作り、それによりある程度決まった生産数を確保できれば自分でメーカーを作り、多少でも雇用先を作っていければと思っています。
♥ShoeCream読者にメッセージをください。
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